霞がかる

音があるのかないのかわからないくらい、激しい雨。
つい数ヶ月前まで庭先には大木と竹が連なる雑木林がありました。いつもは梢を風にそよがせ、ザワザワ、シャラシャラと音を鳴らしていました。
しかし激しい雨の日は、打ちつける雨の重みで息をひそめるようにまったく動かなかったことを思い出します。はじめてその姿を見た時のことはよく覚えていて、明け方にフト目を覚まして窓の外を眺めたのでした。音が音をかき消し、さまざまな闇が折り重なる……ハッとするような、ゾッとするような、それでいて一番深いところでは不思議とホッとするような……何者かに魅入られたように目を離すことが難しい景色。私の中にもこういう景色があって、それを目の前に広げられているような感じがしたものです。それからというもの、大雨が降るたび飽きずに窓越しを眺めていた。
いまはその雑木林はなく、大阪平野が見渡せる庭先になっています。すべてが霞がかった墨絵の世界が目の前に広がっていました。この景色も私のなかにあるような気がします。
ゲンキンなもので、少し気温が下がり、湿気を感じると『木版できるわぁ…』とヤル気になります。大きいサイズを仕上げたいので、その準備。そして小品の連作を作りたいので、絵作り。ひとまず大きいサイズをスッキリさせたい☆
夜になってひんやりしっとりした中を歩くのが心地よく、気持ちも体も落着きます。苦手な夏も、そろそろ折返し地点なのかな。