木版画は彫刻刀を使うから怖くない?手をザックリ切りそうで……」と何度も言われたことがあります。
私は刃物が怖いので「わかる。めっちゃわかる!どこか切ること考えるだけで震える!!」と思ったりもするのですが、一度もそういう事故にあったことがありません。
そして『……木版画で手を切ってしまう時ってどんな場合?』くらいに、ポカーンとしたりもしています。
一度、身振り手振りをまじえて「わたし無意識のうちにこうしてしまうから、絶対にむり」と言われたことがあり、納得でした。
その方は、右手(利き手)に彫刻刀を持ち、左手(空いている手)を刃先の前方に置いていました…あ、あぶない…想像するだけで怖い…今思い出しても、ブルブル。
恐怖を抱えながら、さらに想像すると、なんだかわかります、その持ち方。理にかなっていると言えば、理にかなっている気*1がします。空いている方の手、手持ち無沙汰ですものね。それでいて、なんとなく板を押さえようと思ったら、刃先が届くようなところに手というか腕を置きたくなります……。
私の持ち方は、利き手で彫刻刀を持ち、空いている手は彫刻刀の根元(刃と柄の接続部分)に軽く添えます。彫刻刀を持っている手は彫るように前へ前へ力を入れ、空いている手はその力を制御します。
そうすると刃が滑ったり、彫り過ぎたりすることは少ないですし、なにより手を切る事故はまず避けられます。彫るスピードもあがり、手の負担も軽い。よいことづくめなのでした。
デザインカッターのような形の彫刻刀*2は、上記のような持ち方では使えませんので、やはり「へんに力が入ったら体のどこか切るんじゃないだろうか…」と緊張してしまう、唯一の彫刻刀。
写真は彫った木散乱中。「厚いのから、向こうが透けて見えるくらい薄いのまで、いろんな鰹節みたい。」って言われたことがあります。ほんとほんと、こうやってみると削り節ですね。

*1:気がするだけで、高確率で怪我をするような持ち方は、ぜーんぜん理にかなっていませんけれど。

*2:版木刀、切出し、キワ刀、印刀などの名称があります。