さて、なにができるでしょう!
1
1版目
2
2版目
8
すこしワープして8版目
仕上げ間近
またまたワープして仕上げ間近。
ほぼ仕上がり
この夏、大活躍してくれそうな夏扇。扇面(扇子の骨のない状態)です。扇面仕上げ後、職人さんに仕立てていただきました。
この頃は扇面に布を使用した扇子が多いですが、布の良いところは破れを気にせずにけっこう乱暴に使えることですね。和紙は丈夫と言われても、ふだん使い慣れていなければ破れが気になるのは当たり前だと思います。
と書きつつ、木と紙を友達としている私ですから紙の素敵な点をご紹介したいと思います。
まず一番に軽い。和紙は何層にも重ねて漉いていますが、とにかく軽いです。扇子の場合は和紙は5枚や7枚など(ものによっては、もっと)重ねて漉いているそうです。
お仕立ての場合は絵柄のある表面に紙が多く*1くるように、扇子の骨を入れます。何故か?表には骨が見えず、裏はうっすらと骨が見えるような粋な仕掛けです。
二番目に長持ちします。(布も保存によっては長持ちするかもですが…)ひと夏、扇子を使うとどうしても扇面がひらいて甘くなり、扇子を閉じた時にゆるみます。しかしセメ(扇子を止めている紙)をして、通気性のよいところで保管すると折り目が戻ってくれます。紙も木も生きていますので、使う方に寄り添います。*2
三番目に職人さんがしっかりとお仕立てしたものに限ると思いますが、扇面や骨がくたびれて「お疲れさま」と言ってやりたくなれば、骨と扇面をはずしてもらい、扇面は飾ることができます。いつまでの楽しめるのが嬉しい点だと思います。
「扇づくし」という屏風が日本には沢山残っています。花鳥、人物、風景、水墨、源氏。ばらばら。いろんな「づくし」があります。俵屋宗達の家業は扇屋だったのですが、たくさんの扇面を描き、屏風も多くのこっています。なかには(数はそんなに見たことはないですが)カメのもありました。
ほかにもオススメポイントは沢山あるのですけれど*3、扇子の柄は季節を表したり、先取りしたり、想いを込めたり、ときには護身用にもなりました。
夏扇と言われるものは、季節先取り、蜻蛉や鈴虫、桔梗、ススキ、柿…いずれくる涼しい秋を込めるデザインが古典には多くみられます。
上や下の画像は先取りではなく、年中カメで。ですけれど…。末広がりの扇子と縁起の良いと言われるカメは相性がいいと思います…(相性がよくなさそうでも、カメにしていますけど……)
涼いろいろ
一部のものは一度なくなったものを、版起こしして作り直したものですが、すでに手元に1本しか残っていません。
扇子には男扇、女扇がありサイズが大きいのと小さいの。ですが、女性でも男扇を持たれる方は多いのでは?私は(チビですけど)絶対に男扇派。ですので作っているのも男扇サイズです。
扇子は、本来は自分だけを扇ぐものではなくお隣の方にも優しい風をわけるような扇ぎ方がよいのだそうです。聞いた時は「へ〜!ふうりゅ〜」と思いましたが、バタバタ扇いでいたら絵も楽しめませんしね。みんなで優しく扇ぎあえば、夏の涼しさも増すのかもしれません。持ち方は扇面には触れずに骨の下の部分を手で包むように…が、扇子を長持ちさせるポイントです。
木版画で扇面を作る時の大変さは何かといえば、見当合わせです。版と絵を合わせてするのがハンパなく苦行。もちろん苦行ゆえに闘志がわくのだけれど、むかめ工房ですよ?闘志って言葉、辞書にあるの?意味を理解してる?って話にもなります。
最後にあまり知られていない楽しみポイントのご紹介を。
お仕立てしたものと同じ柄の扇面のみをご覧になる機会は、なかなかないと思うのですけれど、お仕立てすると扇面の幅はグッと縮みます(折り目が入るので)。ビックリするほど縮んでしまうので、扇面の絵を考える時は「とっても間延びした」絵柄にします。お仕立てした時に「ちょうどいい」状態にするために。
浮世絵を使った扇子なども、骨を取ると「実際の浮世絵と全然違う…」と思うような、長細ーい絵になります。見る機会に恵まれたら、かなり楽しめるポイントだと思います。

*1:5枚なら3枚目と四枚目の間に。7枚なら4枚目と5枚目。もしくは5枚目と6枚目かな。

*2:飾ってある扇子なども、虫干しの反対のように、たまに閉じて寝かせてやると美しい姿に戻ります。

*3:やっぱり和紙は丈夫であるのも、オススメポイントです。でもこれは、なかなか伝わりにくい点だろうな〜って思います。たとえ破れたとしても薄美濃紙のような薄い和紙と澱粉糊などで補修すれば本当に長持ちしてくれます。