チャレンジとプレッシャーがのしかかっていた作業がとうとう終了。収穫は大きいものでした。夕方にはドッと疲れが出たようで昏々と寝ました。この収穫を糧に気分を新たに!ですね。
写真は版木とバレンと刷毛。刷毛は手刷毛とか摺り込み刷毛と言われるもので材質は鹿の夏毛です。この刷毛は木版画の道具ではなく染色の道具です。木版画で使う刷毛、ブラシは本来馬の毛を使用しています。私はほとんどの作業では馬のものを使用しますが、たまに鹿毛も使用します。
馬毛の摺り込み刷毛やブラシは手に入りにくく、その上あまり知られていないという面もあるそうで、染色用の道具を木版画の道具と思っておられる方も多いんだそうです。馬毛の摺り込み刷毛やブラシを(木版画を趣味でやっておられる方でも)話に聞くかぎりでは、実際に目にする機会は滅多にないのではないかと思います。鹿毛の摺り込み刷毛で事足りるという面と、木版画専用の刷毛、ブラシを作る職人さんが今では数えるほどしかおられないというのが大きな理由だとは思います。すこし前には木版画の刷毛だけを専門に作ってらした職人さんがおられましたが、私の知るかぎりでは今ではおられません。そして、私は木版画の刷毛だけを作り続けた職人さんの刷毛もブラシも見たことも触れたこともありますが所有はしておらず、喉から手が出そうなほど欲しいのです。つい数ヶ月前に近所の美術館で、その方が作られたブラシが3点展示されていたのですが、状態も大変よく欲しくて欲しくてたまりませんでした。でも手に入れるのは夢のまた夢ですね。
木版画を出来る環境というのは、道具を作る職人さん、版木を扱っている材木屋さん、和紙を漉く職人さん、多くの職人さんがいてこそで(染色ももちろんそうです)そして、それらは各々が手作業で膨大な時間と手間がかかっています。すごいですよね。この道具を色んな方に見てほしいな!このすごさが伝わるいいな!と思う時があるのですが、いかんせん、私は心が狭いですので、門外不出、気軽に「さわっていいよ!どんどん使ってみて!」とは、なかなかどうして言えません。伝える手段は私の作ったもの。と、大きな事を言いたいですが、こちらも気が小さいですので……。